Y染色体アダム

Y染色体アダム(Yせんしょくたいアダム, Y-chromosomal Adam)とは、分子生物学(Molecular biology)、人類遺伝学(Human genetics)においてY染色体の系統を遡った場合に、人類共通の父系祖先とみなせる概念上の男性である(注1)。

概要

ヒトのY染色体は男性から男性へと遺伝する。通常、Y染色体は男性の細胞核中に1本単独で存在し、相同染色体対を作らず、擬似常染色体領域と呼ばれる一部の領域を除いて、染色体の乗換えは起きない。このことから、Y染色体の特異的な領域(MSY, male specific region of Y chromosome)に生じる一塩基多型(SNPs)から、変異の起きた前後関係を特定することで、一人の男性に収斂する(most recent common ancestor)年代が推定されている。分子生物学・人類遺伝学では、この人類共通の父系祖先(Y-MRCA)を、Y染色体アダムと定義している。Y染色体アダムは、約23万4000年前の一人の男性に集約されると推算されている(注2)(注3)。

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なお聖書成立学の立場から考察をした場合、『旧約聖書』に記されている古代の年暦は、実年代の100分の1に縮少して記載されている可能性があり注意を要する。なぜならば、これらの人智を超えた神聖の歴史を実年代で記録し古代の人々に説明をしようとした場合、それらは余りにも悠久膨大な年暦であるため、彼らの理解の範囲を超えてしまう。

そのため、歴史的事実のの骨子をダイジェストにして記録しようとすれば、数々の話を統合、あるいは簡略化したり、誇張したりした可能性が存在するからである。『旧約聖書』に記載されている年代を100倍すると、分子生物学から得られた分子時計による推算年代と極めて詳細に一致していると研究者の間では囁かれている。

例をあげるならば、『旧約聖書』における大洪水の年は紀元前2,370年と計算されているが、これを100倍すれば23万7,000年前となり、現生人類共通祖の年代と推算されている23万4,000年にほぼ重なる。「現生人類共通祖」を「Y染色体アダム」と呼ぶのは、分子生物学者の便宜的な呼称であり、『聖書』を忠実に読めば、A00系統が現在も滅びずに存在している以上、これは「アダム」ではなく「ノア」に例えるべき人物であり、『聖書』の示すノアの年代を100倍すれば、ちょうど「現生人類共通祖」の年代となる。


人類滅亡の危機を乗り越えて、全世界へ拡散

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イスラエルと米国の研究者を中心とする国際研究グループが、米学術専門誌『American Journal of Human Genetics』に発表した論文によると、東アフリカでは13万5,000年~9万年前に激しい旱魃の被害にみまわれ、この旱魃の結果人口が減少、人数的に少ない集団に分離することを余儀なくされた人類は、7万年前に一時、約2,000人未満の集団にまで減少したと考えられ、絶滅の危機をなんとか生き残った人類は再び集団を作り、他の大陸への移住を試みることで人口は拡大し、現在に至る繁栄の基礎を作ったと推測される(注4)。

ミトコンドリア・イヴ

これに対義する概念として、母系からのみ受け継がれるミトコンドリアDNAの変異の起きた前後関係を特定することで、「人類共通の母系祖先」に収斂するミトコンドリア・イヴが知られる。

注1)Peter A. Underhill et al. (2000). "Y chromosome sequence variation and the history of human populations"(PDF). Nature Genetics 26: 358 - 361.
注2)Karmin, Monika, et al. (2015). "A recent bottleneck of Y chromosome diversity coincides with a global change in culture"(PDF). Genome research.
注5)ハプログループA00の存在が明らかになった時点で、ヒトのY染色体は、33万8,000年遡る系統であると報じられたが、その後の調査でA00系統は約20万8300年前、Y染色体アダムは約23万4000年前と考えるのが一般的であると修正されている。


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  • 最終更新:2023-05-25 20:00:05

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