Y染色体D1a2b系統

アフリカ大陸の北東部にいた古代(約6万8,500年前)のある一人の男性の遺伝子に起きたYAPと呼ばれる因子を持つ系統。この系統は、Y染色体上の長腕部「DYS287 Yq11」に、約300塩基からなるAlu配列(Alu sequence)の挿入多型を余分に持つことで知られる。

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(左)D1a2系統の分布図   (右)D系統の拡散経路を示す想定図(2017)

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Y染色体ハプログループD1a2b系統(Yap+)【日本固有種】

分子時計の推算によれば、ハプログループD1b(D-M64.1)からハプログループD1a2b(D-CTS131)へは、約2万5,800年前に分岐した系統である。

日本人の起源

従来の日本人起源論は、
(1)「先住民存在説」(石鏃粛慎説 アイヌ説 プレアイヌ説 コロポックル説)
(2)「日本人原住民説」清野謙次など
(3)「日本人混血説」ドイツ人・ベルツ、鳥居龍蔵など

があったが、最新の分子生物学・人類遺伝学の成果と見比べた場合、清野謙次(Dr. Kenji Kiyono, 1885-1955)の学説が概ね正しいことが明らかとなった(注1)。
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清野謙次の学説によれば、
「洪積期(約180万年前-4万年前)は、日本列島は未だ無人島であったと思われるが、新石器時代に日本列島に初めて人類が到達し、彼らによって石器時代の日本人(のちの縄文人)が生まれた。その後大陸や南洋から種々の人種が渡来して多少ずつは混血したが、石器時代の日本人から一挙に体質を変化させるような大規模な混血はなかった。さらに、時代が進むにつれて、混血や環境、生活状態の変化によって現代日本人となったのである。日本人は日本列島において、はじめから結成されたもので、日本列島は日本人の故郷であり、決してアイヌの母地を占領して居住したものではない。現代アイヌ人も日本石器時代人を祖型とし、その後北部異人種との混血によって、現代のアイヌ人が形成されたのである」というものである(注2)。清野は、医学、人類学、考古学に精通し、生体染色法の応用で組織球性細胞系を発見した病理学の世界的第一人者である。

注1)『日本人はどこから来たか』樋口隆康著、講談社現代新書(1971)

Y染色体ハプログループD1a2b1系統(Yap+)【日本固有種】

北海道 礼文島・船泊5号 縄文人骨

北海道 礼文島の船泊遺跡から出土した約3,800-3,500年前の縄文人骨・船泊5号のY染色体は、ハプログループD1a2b1(D-CTS220)である(注1)。
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礼文島の船泊遺跡は、島北部の船泊湾に面した船泊砂丘の西側にあり、久種湖と海岸の間に出来た高さ10m前後の砂丘上に立地し、縄文時代中期から後期にかけての土器や人骨が発見される遺跡として知られる。1998年に行われた町教育委員会の発掘により、貼床などを伴う生活面24基、墓壙24基、土壙19基、屋外地床炉29基、集石炉58基などが検出され、遺物は後期中葉の船泊上層式が中心。船泊遺跡の時代は、縄文時代の中でも特に南は九州から北は北海道北部まで、統一化された土器文様が見られる時代にあたる。

北海道でアイヌ文化が始まるのは室町時代以降と言われ、それ以前はオホーツク文化に影響された縄文人が主体であったため、礼文島は縄文系倭人居住地の北限とみられている(注2)。

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これらを裏付けるように、青森県の三内丸山遺跡で琉球列島のイモガイをまねた土製品が発見されている。イモガイは、南方から小舟を使い日本海側を通って東北に運ばれていったものと考えられる。さらに北海道礼文島北部の船泊湾の砂丘附近で発見された船泊遺跡でも、イモガイ、マクラガイやタカラガイなど南の暖かい海に生息する貝で作った装飾品が多数出土している。特にイモガイは、日本では九州や沖縄でしか採れないため、南方との交流を示す物理的な証拠であると考えられている(注3)。

注1)第70回日本人類学大会『礼文島船泊縄文人の核ゲノム解析』(2016.10.8)
注3)沖縄人のルーツを探る『貝塚時代前期と縄文時代の本土との接点

Y染色体ハプログループD1a2b1a系統(Yap+)【日本固有種】

加藤周一

評論家、医学博士・加藤周一(Dr. Shuichi Kato, 1919-2008)のY染色体は、''ハプログループ
D1a2b1a''(D-CTS10495)である(注1)。
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Y染色体ハプログループD1a2b1b (Yap+)【日本固有種】

K氏

熊本県下益城郡出身のK氏(1878-1957)のY染色体は、ハプログループD1a2b1b(D-CTS11285)である(注1)(注2)(注3)。

DYS 393 390 19 391 385a 385b 426 388 439 389i 392 389ii
Alleles 13 23 15 10 12 17 11 12 13 13 11 30

注1)FTDNA"JAPAN DNA Project"(Kit Number:647933, Kimura)
注3)Naver Blog"Y-DNA of Shintaro Kimura"

Y染色体ハプログループD1b2a2b (Yap+)【日本固有種】

フィリップ・カン・ゴタンダ

在米日系人三世で、劇作家、映画監督・フィリップ・カン・ゴタンダ(Philip Kan Gotanda, 1951-   )のY染色体は、ナショナル・ジオグラフィック協会の「GENOGRAPHIC PROJECT(Geno1.0)」で、D1a2(D-M64.1)と判定されたが、その後、STRを比較した結果、Y染色体は正確にはハプログループD1a2b1b2(D-CTS288)であろうと推定されている(注1)。
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   (フィリップ・カン・ゴタンダ)

DYS 393 390 19 391 385a 385b 426 388 439 389i 392 389ii
Alleles 12 23 15 10 13 17 11 12 12 14 12 31

フィリップ・カン・ゴタンダは、広島県出身でハワイ・カウアイ島に移住した、五反田甚蔵(1880 - 1948)の子孫である(注2)(注3)。

注1)"Jinzo Gotanda's Y-dna"(Ysearch)
注3)"Philip Kan Gotanda"(公式サイト)

D氏

D氏のY染色体は、ハプログループD1a2b1b2(D-CTS288)である(注1)。

DYS 393 390 19 391 385a 385b 426 388 439 389i 392 389ii
Alleles 12 23 15 10 13 17 11 12 13 14 12 32

注1)FTDNA"Y-DNA D Haplogroup Project"(Kit Number:N109787, Doi)


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  • 最終更新:2019-10-11 17:16:26

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