Y染色体Q系統

Y染色体ハプログループQ系統

漢代・北匈奴の王庭附近墓地出土・古人骨

漢代北匈奴の夏の王庭から出土した複数の男性古人骨を解析した結果、それぞれハプログループQ*(Q-M242*)、ハプログループQ1a*(Q-MEH2)、ハプログループQ1b1(Q-M378)であることが明らかとなった(注1)。これらは、2007年9月に中国・新疆ウイグル自治区バルコル県の東黒溝遺跡から発掘された古人骨に基づく解析結果である(注2)(注3)(注4)。
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注1)呉偉榮『匈奴、孔子、曹操的基因』(2015年秋)
注2)新疆哈密地區巴里坤-黑溝梁墓地的發掘, 被認爲是漢代匈奴夏季王庭所在地, 墓地人類遺骸檢測出全是Q類型: Q1a*, Q1b, Q*。 後來的研究表明,還存在幾例Q-M3, 即印第安人的主要類型之一。
注3)中国通信社『新疆東黒溝遺跡は北匈奴の夏の王庭、専門家が初歩的認定』(2007.9.16)によれば「(中国通信=東京)ウルムチ2007年9月16日発新華社電によると、新疆ウイグル自治区文物局と考古研究所は先ごろ、現在発掘、整理中のバルコル県東黒溝遺跡は中国最大の古代遊牧民族の集落跡であるだけでなく、漢代北匈奴の王庭と初歩的に認定されたと発表した。西北大学文化遺産・考古研究センター、新疆ウイグル自治区考古研究所、ハミ地区文物局は昨年から、バルコル県東黒溝遺跡について2年連続の考古学発掘を進めている。これまでに石で築いた高台1基、石で囲んだ住居の土台4基、墓12基が発掘され、大量の岩画が発見され、少なからぬ土器と銅器が出土した。発掘作業の推進者の一人、西北大学考古学科主任の王建新教授は出土文物の真剣な考証を行うとともに、詳細な歴史資料を参照した後、遺跡の年代が最も古くて、戦国晩期から西漢初期に遡ることを確認した。遺跡は同時に、当時強大な匈奴が月氏を打ち破り、この地域を占拠したという史実を証明している。東黒溝遺跡の規模を基に、王教授はこれが北匈奴の夏季の王庭であることを確認した。また、早くもシルクロード開通以前に、東・西洋の各民族間の交流、融合がすでに始まっていたとみている。小河墓地考古学研究の発起人、新疆ウイグル自治区考古研究所所長の伊弟利斯教授は次のように話している。中国で古代遊牧文化の大型集落跡の総合的考古学研究が行われるのは初めてであり、東黒溝遺跡の発見と研究は、古代遊牧文化の社会・経済形態の探求、特に漢代の匈奴と月氏両民族の文化の研究に、非常に重要な最新資料を提供している」とある。
注4)ISOGG Tree(ver.10.79)による表記。原文ではISOGG 2008による旧表記で各々「Q*(Q-M242*)」、「Q1a*(Q-MEH2*)」、「Q1b(Q-M378)」である。

独眼龍・李克用

独眼龍と呼ばれた猛将で、後唐の始祖・李克用(856-908)のY染色体は、ハプログループQ(Q-M242)であると推定される(注1)(注2)(注3)。李克用は、突厥沙陀族の出身で、突厥風の本姓は「朱邪(朱耶)氏」。子の荘宗(李存勗)が、後唐を建国して皇帝に即位した。
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注1)Qui Y et al. 2015, Identification of kinship and occupant status in Mongolian noble burials of the Yuan Dynasty through a multidisciplinary approach, Phil. Trans. R. Soc. B370:20130378
注3)梳妆楼墓地(所在:中国河北省張家口市梳妆楼)汪古部 高唐王 闊里吉思遺骨検測結果 Y-DNA haplogroup Q-M242。汪古部之先祖 沙陀族・李克用、亦 Q-M242。

趙王・闊里吉思

元代・オングート(白韃靼)の王で、趙王闊里吉思(   -1298)のY染色体は、ハプログループQ(Q-M242)である(注1)(注2)。これは、梳妆楼墓地にあるオングート高唐王・闊里吉思の遺骨を鑑定した結果による。
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闊里吉思は、クビライ(忽必烈)の皇太子・チンキム(真金)の娘、忽答的迷失を娶リ、後にはテムル(成宗)の娘、愛牙失里を娶った。1292年、元の成宗は、闊里吉思を高唐王に封じた。1305年、「趙王」の号を追封され「駙馬高唐忠献王碑」が建てられた。この結果により闊里吉思と同祖で、テュルク系民族の突厥沙陀族出身である後唐の始祖・李克用もまたハプログループQ(Q-M242)であったと推定されている(注3)。

注1)Qui Y et al. 2015, Identification of kinship and occupant status in Mongolian noble burials of the Yuan Dynasty through a multidisciplinary approach, Phil. Trans. R. Soc. B370:20130378
注3)梳妆楼墓地(所在:中国河北省張家口市梳妆楼)汪古部 高唐王 闊里吉思遺骨検測結果 Y-DNA haplogroup Q-M242。汪古部之先祖 沙陀族・李克用、亦 Q-M242。

Y染色体ハプログループQ1a1系統

周・文王

古代中国・周朝の始祖・文王(BC1152-BC1056)のY染色体は、ハプログループQ1a1a1(Q-M120)であると推定される(注1)(注2)。
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注2)ISOGG Tree(ver.11.79)による表記。原文のISOGG 2011による旧表記では「Q1a1(Q-M120)」である。

孔子(温州平陽派)

中国・春秋時代の思想家、哲学者・孔子(BC552-BC479, Confucius)の第42世孫・孔檜の子孫のY染色体は、ハプログループQ1a1a1(Q-M120)である(注5)。

孔子が、いかなるY染色体の系統に属するかを解析するために、曲阜孔氏の男性1,118名を対象に調査を行ったところ、ハプログループC2(C-M217)(46.06%)、ハプログループQ1a1a1(Q-M120)(27.01%)、ハプログループO2(O-M122)(20.66%)、その他(6.27%)であることが判明した(注1)(注2)。これは、平陽派孔氏から得られたサンプルに基づく。孔檜は、孔光嗣の堂弟で、孔檜とその族弟である孔庄は曲阜を出て温州平陽に遷り、平陽派孔氏の始祖となったとされる。

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この結果により、従来は同一父系に属すると考えられてきた「曲阜孔氏」が、実際には、ほぼ3系統の異なる父系の子孫に分かれることが明らかとなった。また、実際の孔子の系統は、ほぼ半数(46.06%)を占めるハプログループC2(C-M217)である可能性が高いと考えられる一方で、漢民族としては比較的珍しいハプログループQ1a1a1(Q-M120)が「曲阜孔氏」の男性から4人に1人以上(27.01%)の高頻度で検出されたことなどから、こちらが実際の孔子の系統ではないかと考える研究者もいたが、その後、孔子の家系の祖系である宋前湣公の系統がハプログループC2c1a2a(C-F948, F1319, subclade-F8841)であることが判明し、孔子の子孫を名乗る家系の内C2系統とされたグループと父子関係が立証された為、約半数(46.06%)に当たる(C-M217 subclade-F1319)が孔子の真の系統であることが明らかとなった。(Q系統は孔子の弟子・子路が迫害にあった際、事情があって孔子の家系の者の養子となったのではないかと推測されている) これらは、濟南鐡路公安局刑事技術所や、復旦大學らの研究チームの解析によるものである(注3)(注4)。
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注2)測試様本數爲曲阜地區孔姓人群1118例箇例。測試結果表明,曲阜孔姓出現三種高頻單倍群:C3(46.06%)、Q1a1(27.01%)、O3(20.66%)。其中O3因爲没有集中趨勢,估計O3三大支等全都有,而被論文作者自己排除在孔子后裔之外。論文作者認爲C3和Q1a1都有可能是孔子后裔的類型。
注4)ISOGG Tree(ver.10.79)による表記。原文ではISOGG 2014による旧表記で各々「C3(C-M217)」、「O3(O-M122)」、ISOGG 2012による旧表記で「Q1a1(Q-M120)」とある。
注5)分子人類學吧『孔子及其内孔家族Y-DNA之謎解析』(2016.1.29)

子路 (孔門十哲の一)

孔子の弟子で孔門十哲の一に数えられる子路(Zi-lu, 本名:仲由, BC543-BC481)のY染色体は、ハプログループQ1a1a1(Q-M120)である(注1)。これは、子路の子孫である「山東濟寧・仲氏」の男性複数名から得られたサンプルに基づく結果である(注1)(注2)(注3)。
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子路は、春秋時代の卞(現 山東省)の人。勇を好んで正義感に強く直情径行な性格であった。ときおり孔子に食ってかかるが、孔子はその朴訥を愛でて教戒の言には、親愛の情をこめた。のち、孔子の推挙によって衛の国に仕えたが、内乱の鎮定に赴いた時に殺され、細切れに切り刻まれ、塩漬けにされて晒し者にされた。孔子はこれを深く悲しんで、以後、塩漬けの食品を食べなかった(注4)。

注1)『分子人類與華夏文明』(2014.3.11)
注2)『分子人類與華夏文明』(2014.3.11): 山東濟寧一仲姓結果測試爲Q-M120+, 仲姓祖先爲孔子弟子,子路後裔,世居山東濟寧。外徙最早的當數仲子第二十代孫靈沼, 漢時爲酒泉判, 子時良, 在漢桓帝元嘉年間(152年)中舉孝廉不就, 遂家於酒泉, 甘西仲氏是其後也。
注3)ISOGG Tree(ver.10.79)による表記。原文のISOGG 2012による旧表記では「Q1a1(Q-M120)」である。

寧夏・彭陽県出土、東周時代貴族人骨

中国・寧夏回族自治区彭陽県から出土した東周時代の貴族の古墓を調査した結果、総ての男性の遺体からY染色体ハプログループQ1a1a1(Q-M120)が検出された(注1)。遺体の傍らには青銅の剣が安置され、東周時代の貴族階級の人々であったとされる(注2)(注3)。
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注1)呉偉榮『匈奴、孔子、曹操的基因』(2015年秋)
注2)寧夏彭陽縣出土東周時期古墓, 遺骸檢測出全是Q1a1類型, 是東亞常見的單倍型類群。 墓葬旁邊有青銅劍,春秋戰國祇有貴族才能佩劍。孔子即出身貴族。
注3)ISOGG Tree(ver.10.79)による表記。原文のISOGG 2012による旧表記では「Q1a1(Q-M120)」である。

Y染色体ハプログループQ1a2系統

殷・帝辛紂王

古代中国・殷の末代王である帝辛紂王(在位:BC1075-BC1046)のY染色体は、ハプログループQ1a2(Q-M346)であると推定される(注1)(注2)。
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甲骨文によれば、帝辛紂王は神への祭祀をすること厚く、東の人方と言う部族を討ち国勢は益々盛んになったが、熱心に祭祀を行ったために生贄を多く必要とした。後代、周の編纂した史書では、帝辛紂王は、美女・蘇妲己にかまけて暴政を敷き、周の武王に誅された暴君として記されているが、これは正当な評価ではなく、周の文王と武王を聖人化するためその対比として悪く記されたと考えられている。

注2)ISOGG Tree(ver.11.79)による表記。原文のISOGG 2011による旧表記では「Q1a3(Q-M346)」である。

マヌエル・ガレゴス

インカ帝国の末裔でアメリカのインディオ・マヌエル・ガレゴス(Manuel Gallegos, 1729-1776)のY染色体は、ハプログループQ1a2a(Q-L53/S326)である(注1)。
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注1)ftdna"Manuel Gallegos's Y-DNA"(kit No.191315)

ゴヤスレイ・ジェロニモ

白人のアメリカ大陸侵略に対抗した英雄で、アパッチ族の戦士・ゴヤスレイ・ジェロニモ(Goyathlay Geronimo, 1829-1909)のY染色体は、ハプログループQ1a2a1a1(Q-M3)であると推定される(注1)(注2)(注3)。アパッチ族は、北アサバスカ語系ナ・デネ語族の系統(注4)であり、アパッチ族の大多数を占める78%がこのハプログループに属している(注5)。
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注3)ISOGG 2014による表記。原文のISOGG 2012による表記では「Q1a3a1(Q-M3)」である。
注4)Distribution of Y chromosomes among Native North Americans"A study of Athapaskan population history"

ケネウィックマン

1996年7月31日、アメリカのワシントン州にあるコロラド川流域の「ケネウィック」で発掘された古代人骨(約8700年前)・ケネウィックマン(Kennewick Man)のY染色体は解析の結果、ハプログループQ1a2a1a1c(Q-M199)であることが明らかとなった(注1)。これは、モルテン・ラスムッセンら欧米研究チームが発表した遺伝子解析の論文に基づくものである(注2)。ケネウィックマンのミトコンドリアDNAはこちらを参照。
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注1)Genetic Genealogy Tools"Ancient DNA"(2015)
注2)イギリス科学誌『ネイチャー』(2015年7月23日号)

Y染色体ハプログループQ1b系統

ジュリアス・ロバート・オッペンハイマー(大量破壊兵器の開発者)

ユダヤ系アメリカ人の理論物理学者で、原子爆弾(大量破壊兵器)開発の指導者的役割を果たした、ジュリアス・ロバート・オッペンハイマーのY染色体は、ハプログループQ1b(Q-L275)である(注1)。
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オッペンハイマーは、ユダヤ系アメリカ人の物理学者である。理論物理学の広範な領域にわたって国際的な業績をあげたが、第二次世界大戦当時ロスアラモス国立研究所の所長としてマンハッタン計画を主導。卓抜なリーダーシップで原子爆弾開発プロジェクトの指導者的役割を果たしたため「原爆の父」として知られる。オッペンハイマーの父は、ドイツ生まれ。17歳でアメリカに移民したジュリアス・オッペンハイマーで、母は東欧系ユダヤ人の画家のエラ・フリードマンである。オッペンハイマーの開発によって世界の悲劇が始まったと言われている。


トニー・クシュナー

ユダヤ系アメリカ人の劇作家、脚本家・トニー・クシュナー(Tony Kushner, 本名:アンソニー・ロバート・クシュナー/Anthony Robert Kushner, 1956-   )のY染色体は、ハプログループQ1b(Q-L275)である(注1)。これは、PBSテレビ『あなたのルーツを見つける(Finding Your Roots)』シリーズによって明らかになった(注2)。
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注2)finding your roots"Tony Kushner's Y-DNA haplogroup subclade Q1b–L275"(2014.11.4放送)

ディーパック・チョプラ

インド系アメリカ人で代替医療の提唱者、ニューエイジ運動の著名人・ディーパック・チョプラ(Deepak Chopra 1947-   )のY染色体は、ハプログループQ1b(Q-L275)である(注1)。これは、PBSテレビ『あなたのルーツを見つける(Finding Your Roots)』シリーズによって明らかになった(注2)。チョプラは、インド・ニューデリーの出身。
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注2)finding your roots"Deepak Chopra's Y-DNA haplogroup subclade Q1b–L275"(2014.11.11放送)

Y染色体ハプログループQ1b2b1a2a系統

マルティン・リスベルグ

スウェーデンのマルティン・リスベルグ(Mårten Risberg, 1724-1767)のY染色体は、ハプログループQ1b2b1a2a(Q-YP5085)である(注1)。これは、彼の子孫から得られたデータに基づく。

注1)FTDNA"The Baltic Sea DNA Project"(Kit:N81037, Ekblad)


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  • 最終更新:2018-03-31 23:07:43

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