Y染色体C1系統

Y染色体ハプログループC1a1系統 【日本固有種・縄文系】

浅瀬の海で漁撈生活をしていた海洋民族で、約4万2,000年前の旧石器時代に、東南アジアからスンダランドを北上して、無人の日本列島に初めてやって来た人々であると考えられている。のちにやって来たハプログループD系統の人々と混ざり、縄文文化を形成した。このC1a1系統は、YAP因子を持たない縄文人の系統である。

従来の日本人起源論は、
(1)「先住民族存在説」(石鏃粛慎説、アイヌ説、プレアイヌ説、コロポックル説)
(2)「日本人原住民説」清野謙次など
(3)「日本人混血説」ドイツ人・ベルツ、鳥居龍蔵など

があったが、最新の分子生物学・人類遺伝学の成果と見比べた場合、清野謙次(Dr. Kenji Kiyono, 1885-1955)の学説が概ね正しいことが明らかとなった(注1)。
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清野謙次の学説によれば、
「洪積期(約180万年前-4万年前)は、日本列島は未だ無人島であったと思われるが、新石器時代に日本列島に初めて人類が到達し、彼らによって石器時代の日本人(のちの縄文人)が生まれた。その後、大陸や南洋から種々の人種が渡来して多少ずつは混血したが、石器時代の日本人の体質が一挙に変化するような大規模な混血はなかった。やがて、時代が進むにつれて、混血や環境、生活状態の変化によって現代日本人となったのである。日本人は日本列島において、はじめから結成されたもので、日本列島は日本人の故郷であり、決してアイヌの母地を占領して居住したものではない。現代アイヌ人も石器時代の日本人を祖型とし、その後、北方異人種との混血によって、現代のアイヌ人が形成されたのである」というものである(注2)。清野は、医学、人類学、考古学に精通し、生体染色法の応用で組織球性細胞系を発見した病理学の世界的第一人者である(注3)。

注1)『日本人はどこから来たか』樋口隆康著、講談社現代新書(1971)
注3)『京都大学医学部病理学教室百年史』

沖縄県具志頭村・港川1号人骨(港川人)

沖縄県具志頭村から出土した古代人骨・港川人(約1万7000年前)は、オーストラリア先住民と骨格が近似しているため、Y染色体はハプログループC系統のC1a1(C-M8)(注1)に連なる系統にあたると推定されている(注2)。
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      (港川1号人骨)            (港川人の復元模型)
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注1)ISOGG 2014による表記。2013版迄の表記では「C1」

猿田彦命

猿田彦命(Sarutahiko-no-mikoto)のY染色体は、ハプログループC1a1(C-M8)である(注1)。猿田彦命は、椿大神宮(三重県鈴鹿市)にも祀られている古代人である。
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    (猿田彦命)           (椿大神宮)
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豊臣秀吉

天下三英傑の一人で、関白、太閤に任ぜられた豊臣秀吉(Toyotomi no Hideyoshi, 1537-1597)のY染色体は、ハプログループC1a1(C-M8)であると推定される(注1)。これは、豊臣秀吉の歯として保管されていたサンプルを解析した結果に基づく(注2)。
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注1)SMGF:Y-dna STR of Hideyoshi Toyotomi(2008.9.18)
注2)豊臣秀吉の歯は、生前に加藤嘉明(1563-1631)へ贈られた左上第二大臼歯(豊国神社宝物殿蔵)が著名であるが、調査されたものは、豊臣秀吉300回忌にあたる明治30年(1897)、阿弥陀ヶ峰中腹に埋葬されていたミイラ化した遺体を山頂に改葬する際に得られた歯(個人蔵)に基づく。ただし、秀吉の墓は江戸時代に一度盗掘の被害に遭い埋め戻された経緯があるため、この結果は確定的ではない。この歯からは血液型がO型であることが判明している。

遼寧省錦州の男性

中国・遼寧省錦州大業郷出身の男性から得られたY染色体を解析した結果、日本固有種と同じハプログループC1a1(C-M8)が検出された(注1)。


Y染色体ハプログループC1b1系統

コステンキ遺跡出土人骨

1954年に、ロシアヴォロネジ州のドン川近くにあるコステンキ遺跡から発掘された旧石器時代(約3万8,700-3万6,200年前)の狩猟採集者である若い男性の古人骨・コステンキ14号のY染色体は、ハプログループC1b1*(C-K281*)である(注1)(注2)。
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    (コステンキ遺跡出土人骨)
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Y染色体ハプログループC1b2系統

アボリジニー

オーストラリア大陸タスマニア島などの原住民族である・アボリジニー(Aborigine)のY染色体は、ハプログループC1b2b(C-M347)が60%、パプア・ニューギニアなどに多い系統のハプログループK2(K-M526)が22%である(注1)。
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注1)Hudjashov, G.; Kivisild, T.; Underhill, P. A.; Endicott, P.; Sanchez, J. J.; Lin, A. A.; Shen, P.; Oefner, P.; Renfrew, C.; Villems, R.; Forster, P. (2007). "Revealing the prehistoric settlement of Australia by Y chromosome and mtDNA analysis". Proceedings of the National Academy of Sciences 104 (21): 8726–30. doi:10.1073/pnas.0702928104. PMC 1885570.


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  • 最終更新:2017-09-28 10:19:29

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