mtDNA H系統

ミトコンドリアDNAハプログループH系統 【欧州系】

ミトコンドリア・ハプログループHは、ヨーロッパ、中近東やコーカサス地方の人々の間で非常に一般的に見られるミトコンドリア(母系)の系統です。この系統は、ヨーロッパにやってくる前に、西アジアで2万5千年前に誕生したと考えられ、ヨーロッパへの流入した時期については諸説ある(注1)。

注1)Mitochondrial haplogroup H is a very common and diverse mitochondrial lineage among populations in Europe, the Near East and the Caucasus region. The lineage is likely to have evolved around 25,000 years ago in West Asia, before being transported into Europe. The timing of the entry of the lineage into Europe is subject to debate, though certain lineages such as H1 and H3 are thought to have been introduced by late Upper Palaeolithic or Mesolithic hunter-gatherers up to 18,000 years ago, while other haplogroups including H2, H5, H7, H13 and H20 have been linked to the expansion of Neolithic farmers into the area around 7000 years ago.

聖ルカ

新約聖書の『ルカによる福音書』・『使徒行伝』の著者で、西方世界では医者および画家の守護聖人とされる聖ルカ(Luke the Evangelist, AD10-AD93)のミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)(注2)(注3)。
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歴史的な記録によると、聖ルカは、シリアのローマ属州アンティオキアに生まれ、84歳の時にボイオティアのテーバイで死去した。彼の遺体は、初めコンスタンティノープルに埋葬されたが、後にイタリアのパドゥアにあるサンタ・ジュスティーナ教会(注4)に移葬された(注5)。この教会にある彼の遺体から得られたDNAを、シリア人やギリシア人のサンプルと比較した結果、彼はシリア人を祖先に持つ人物であることが明らかとなった(注6)。

名前 ミトコンドリアDNA配列 ハプログループ
聖ルカの遺体 16235G, 16291T H

注4)聖ジュスティーナが殉教した地に建てられた教会(Basilica di Santa Giustina)で、聖ルカの遺体を納めた聖墓がある。
注6)Le sue ossa furono trasportate a Costantinopoli nella famosa Basilica dei Santi Apostoli; le sue spoglie giunsero poi a Padova, dove tuttora si trovano nella Basilica di Santa Giustina. La sua testa è stata traslata dalla Basilica di Santa Giustina alla Cattedrale di San Vito a Praga nel XIV secolo; infine una costola del corpo di San Luca è stata donata nel 2000 alla Chiesa greco-ortodossa di Tebe. Esiste un'altra reliquia della testa del Santo nel Museo Storico Artistico "Tesoro" nella Basilica di San Pietro in Vaticano.

スヴェン2世

デンマーク最後のバイキング王でエストリズセン朝(1047年 - 1375年)を開いたデンマーク王・スヴェン2世(1019-1074)のミトコンドリアDNAは、ハプログループHである。これは、ロスキレ大聖堂に埋葬されていたスヴェン2世の遺体の歯から得られたサンプルを解析した結果に基づくものである(注1)。また、スヴェン2世の近くに埋葬されていた女性の遺体は、スヴェン2世の母・エストリズ(スヴェン1世の娘)であると思われていたが、女性の遺体の歯から得られたサンプルを解析した結果、ミトコンドリアDNAは、ハプログループH5aであることが判明したため、この女性の遺体はスヴェン2世の母・エストリズではない可能性が高いと結論づけられた(注2)。
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マリー・アントワネット

フランス国王・ルイ16世の王妃・マリー・アントワネットのミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)(注2)(注3)。これは、子供の頃に切られた彼女の毛髪から抽出されたミトコンドリアDNAの分析による。この結果は、彼女の息子であるルイ17世の心臓から得られたサンプルとも一致している(注4)。
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名前 ミトコンドリアDNA配列 ハプログループ
マリー・アントワネット 16519C, 152C, 194T, 263G, 315.1C H


ヴィクトリア女王

イギリス王室のヴィクトリア女王のミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)(注2)。 これは、彼女の母系の孫・ロシア皇帝 ニコライ2世の皇后・アレクサンドラ・フョードロヴナの解析結果に基づく。
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名前 ミトコンドリアDNA配列 ハプログループ
ヴィクトリア女王 16111T, 16357C, 263G, 315.1C H


エディンバラ公フィリップ殿下

イギリス王室のエディンバラ公フィリップ殿下のミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)。フィリップ殿下の母は、アリス・オブ・バッテンバーグである。
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アリスは、生まれつきの聾唖であったが読唇で数カ国語を理解した。アリスは、ギリシアの王子アンドレイオスと結婚し、そのギリシア王室からイギリス王室へ婿入りされたのが、フィリップ殿下である(注2)。

注2)名のもとに生きて『王室の血友病 遺伝子鑑定』(2015.7.30)

アレクサンドラ・フョードロヴナ

ロシア皇帝 ニコライ2世の皇后・アレクサンドラ・フョードロヴナ(Alexandra Feodorovna, 1872-1918)のミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)。アレクサンドラ・フョードロヴナの母は、イギリス王室・ヴィクトリア女王の次女アリスである。
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クリスチャン・カーデル・コルベット

カナダの肖像画家・クリスチャン・カーデル・コルベットのミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)。


スーザン・サランドン

アメリカ合衆国の女優・スーザン・サランドン(Susan Sarandon)のミトコンドリアDNAは、ハプログループHである(注1)(注2)。
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ウィリアム・アダムス(三浦按針)

徳川家康に仕えたイギリス人・ウィリアム・アダムス(三浦按針)のミトコンドリアDNAは、ハプログループH1e2bである。これは平戸に埋葬されたウィリアムス・アダムス(三浦按針)自身の墓から出土した人骨を解析した結果的に基づく(注1)(注2)。
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ウィリアム・アダムスは1620年5月16日に平戸にて死去。享年55歳。その後、1637年に起きた島原の乱により、キリスト教に対する禁教政策のなかで外国人墓地が秘匿された為、アダムスの正確な埋葬地も不明とされていたが、平戸市内にはその遺骸を埋葬したとされる『伝・三浦按針墓(改葬墓)』があり、1931年、その墓から遺骨の一部が発掘された。1931年の発掘調査では調査後、遺骨が埋め戻されたが、2017年、平戸市教育委員会によって再度発掘調査が行われ、陶器製の骨壺に入った人骨が再確認された。この人骨のDNA解析によるもの(注3)(注4)。

注3)『三浦按針墓から出土した人骨』(Mizuno et al, 2020)

マホメット・オズ

アメリカを始め、世界140ヶ国で放送されている健康情報トーク番組・「ドクター・オズ・ショー」で司会を務める、コロンビア大学心臓外科教授・マホメット・オズ博士(Dr. Oz)のミトコンドリアDNAは、ハプログループH2a1である(注1)(注2)。
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ジェームズ・ウィリアム・バフェット

アメリカの歌手、作曲家、作家、映画監督として有名なジェームズ・ウィリアム・バフェット(James William Buffett, 1946-   )のミトコンドリアDNAは、ハプログループH3である(注1)(注2)。ジェームズ・ウィリアム・バフェットのY染色体はこちらを参照。
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ウォーレン・エドワード・バフェット

アメリカ合衆国の投資家で経営者であるウォーレン・エドワード・バフェット(Warren Edward Buffett, 1930-   )のミトコンドリアDNAは、ハプログループH4aである(注1)(注2)。ウォーレン・エドワード・バフェットのY染色体はこちらを参照。
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アビゲイル・ラスリー

ジョセフ・ベントン・アーメントラウト(Joseph Benton Armentrout, 1800-1863)の妻・アビゲイル・ラスリー(アーメントラウト)(Abigail Lasley, 1810-1853)のミトコンドリアDNAは、ハプログループH10である(注1)。これはアビゲイルの女系の五世孫にあたるジェームス・リー・レーダー(James Lee Rader, 1942-  )から得られたサンプルに基づく結果である(注2)。
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(レバッカ・アーメントラウト)   (エフィー・フォーバー)     (メレディス・ヴァレンタイン)  (エヴァリン・スティーヴンソン)

注1)ジェームズ・レーダー『系図探求者のためのDNA入門』(2014)
注1)系譜上は、アビゲイル・ラスリー(Abigail Lasley, 1810-1853) > レバッカ・ベル・アーメントラウト(Rebecca Belle Armentrout, 1844-1934) > エフィー・ルイーズ・フォーバー(Effie Louise Fauver, 1867-1950) > メレディス・ベル・ヴァレンタイン(Merdeth Bell Valentine, 1891-1973) > エヴァリン・レノーア・スティーヴンソン(Evelyn Lanore Stevenson, 1911-1971) > ジェームズ・リー・レーダー(James Lee Rader, 1942-  )となる。

世田谷一家殺害事件の容疑者

2000年に東京都世田谷区の一家4人が惨殺された事件の容疑者のミトコンドリアDNAは、ハプログループH15である(注1)。
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このハプログループは、アジア人やアフリカ人には全く見られず、アドリア海や地中海の南欧系人種に見られるため、犯人の母親が南欧系の女性であると直ちに特定できるものではないが「アジア系含む日本国外の人」または「混血の日本人」である可能性も視野に入れて警察は捜査をしている(注2)。容疑者の遺留品の中には、韓国でしか販売されていない「スラセンジャー」というメーカーのスニーカー(27.5cm)や、韓国製のヒップバッグも含まれている。この容疑者の血液型は、A型である。世田谷一家殺害事件の容疑者のY染色体はこちらを参照。

注2)母系の祖母、曾祖母が南欧系の女性の可能性もある。

ナポレオン・ボナパルト1世

ナポレオン・ボナパルト1世(Napoleon Bonaparte I)のミトコンドリアDNAは、ハプログループH15a1bである(注1)(注2)。
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ナポレオンのY染色体はこちらを参照。


ニコラウス・コペルニクス

ニコラウス・コペルニクス (Nicolaus Copernicus)のミトコンドリアDNAは、ハプログループH27である(注1)(注2)。
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コペルニクスのY染色体はこちらを参照。



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  • 最終更新:2023-06-11 12:24:12

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